雪が降る環境で車中泊をするとき、特に注意したいのが「雪でマフラーが埋まった状態でエンジンをかけ続けること」です。
マフラーの排気口が雪でふさがれると、排気ガスが車体の下にたまり、車内へ入り込むことがあります。排気ガスに含まれる一酸化炭素(CO)は無色・無臭のため、異変に気付かないまま中毒が進むおそれがあります。
結論として、降雪中や車が雪に埋まり始めた状況では、可能な限りエンジンを停止し、マフラー周辺をこまめに除雪することが重要です。窓を少し開けるだけでは安全を確保できないため、正しい対策を確認しておきましょう。
雪でマフラーが埋まる可能性がある場所では、エンジンをかけたまま眠らないことが基本です。やむを得ずエンジンを使用するときは、マフラー周辺の雪を取り除き、降雪中は再び埋まっていないか繰り返し確認してください。
車中泊で雪によりマフラーが埋まると何が危険?
雪の日の車中泊でマフラーが埋まると危険なのは、単にエンジンの排気が悪くなるからではありません。排気ガスが車体周辺に滞留し、車内へ流れ込むことで一酸化炭素中毒を起こす危険性があります。
マフラーが雪でふさがれると排気ガスが車内へ入ることがある
通常、エンジンから発生した排気ガスはマフラーから車外へ排出されます。しかし、積雪や吹きだまりによってマフラー周辺が埋まると、排気ガスが正常に外へ逃げにくくなります。
特に車体の周囲まで雪に覆われると、排気ガスが床下などにたまり、車体の隙間や空調の吸入口などを通じて車内へ入り込む可能性があります。
一酸化炭素は無色・無臭で気付きにくい
一酸化炭素(CO)は、燃料の燃焼によって発生する有毒な気体です。無色・無臭のため、人の感覚だけでは発生を判断することが難しい特徴があります。
吸い込むと血液による酸素の運搬が妨げられ、頭痛やめまい、吐き気などが現れます。濃度が高くなったり吸い込む時間が長くなったりすると、意識障害やけいれんなどにつながり、最悪の場合は命にかかわります。
JAFのテストでは短時間で危険な濃度まで上昇している
JAFが雪で車を埋めた状態を再現して行ったユーザーテストでは、マフラー周辺を除雪しなかった車内の一酸化炭素濃度が開始16分後に400ppmまで上昇しました。
さらにその約6分後には、測定上限だった1,000ppmに達しています。一方、マフラー周辺を除雪した車では、一酸化炭素はほとんど検知されませんでした。
一度雪を取り除けば終わりではなく、積雪状況を継続して確認する必要があります。
雪の日の車中泊で最優先したい5つの対策
雪の中で車内に滞在するときは、暖かさだけを優先してエンジンをかけ続けるのは危険です。一酸化炭素中毒と低体温の両方を考え、安全を確保する必要があります。
1.可能な限りエンジンを停止する
最も確実な一酸化炭素中毒対策は、排気ガスを発生させないことです。降雪中や車体の周囲に雪が積もっている場合は、可能な限りエンジンを停止して車内で待機します。
特に眠っている間は積雪の変化に気付きにくいため、エンジンをかけたまま就寝するのは避けるべきです。
ただし厳冬期はエンジンを止めると車内温度も大きく下がります。寝袋や毛布、防寒着などを使い、エンジンに頼らなくても寒さをしのげる準備が重要です。
2.マフラー周辺の雪を広く取り除く
暖房などのためにやむを得ずエンジンを使用する場合は、始動する前にマフラー周辺を確認してください。
排気口の先端だけを見える状態にするのではなく、周辺の雪を取り除いて排気ガスが逃げる空間を作ることが大切です。
- マフラーの排気口を完全に露出させる
- 排気口周辺の雪を広めに取り除く
- 車体後方に排気ガスが逃げる空間を確保する
- 降雪中は定期的に再確認する
3.窓を少し開ければ安全とは考えない
「窓を開けておけば排気ガスが抜けるのでは」と考える人もいますが、窓を開けるだけでは十分な対策になりません。
JAFのテストでは、マフラー周辺を除雪せず運転席の窓を約5cm開けた条件でも、一酸化炭素濃度が上昇しています。
風向きや積雪状況によって排気ガスの流れは変化するため、換気よりも先にマフラー周辺の除雪とエンジン停止を優先してください。
4.車の周囲とドアの状態も確認する
降雪が続くと、マフラーだけでなくドア周辺も雪に埋まっていきます。特に吹雪では短時間のうちに吹きだまりができることがあります。
緊急時に車外へ出られなくなるのを防ぐため、周囲の安全を確認できる状況であれば、ドア周辺の雪も定期的に取り除いておきましょう。
5.エンジンを切っても過ごせる防寒装備を用意する
「寒いからエンジンを切れない」という状態を避けるためには、車中泊へ出発する段階での装備が重要です。
- 冬季対応の寝袋
- 毛布
- 厚手の防寒着
- 帽子や手袋、厚手の靴下
- 使い捨てカイロ
- 除雪用スコップ
- 飲料水と非常食
- モバイルバッテリー
- 携帯トイレ
JAFの低温環境でのテストでも、エンジン停止後は時間の経過とともに車内温度が低下しています。冬の車中泊では「車の暖房を使えば大丈夫」と考えず、暖房が使えなくても一定時間耐えられる装備を用意しておくことが重要です。
マフラーが雪に埋まっていたときの対処手順
車中泊中や停車中に雪が積もり、マフラーが埋まっていることに気付いたら、慌ててエンジンをかけ続けるのではなく、安全を優先して対応します。
- 可能であればエンジンを停止する
- 周囲の交通や天候を確認する
- 安全に車外へ出られる場合だけ外へ出る
- スコップなどでマフラー周辺の雪を取り除く
- 車体後方にも排気ガスが逃げる空間を作る
- ドア周辺も除雪し、脱出経路を確保する
- 降雪が続いている場合はこまめに再確認する
一酸化炭素中毒が疑われるときはエンジンを停止し、安全に移動できる状況なら新鮮な空気のある場所へ避難し、119番へ連絡してください。
雪の車中泊でやってはいけない4つの行動
エンジンをかけたまま朝まで眠る
降雪中に最も避けたいのが、エンジンをかけた状態で長時間眠ることです。
就寝時は外の積雪状況を確認できません。寝る前にマフラー周辺を除雪していても、その後の降雪や風によって再び埋まる可能性があります。
窓を開けているから大丈夫だと思う
窓を数cm開けていても、風向きなどの条件次第では一酸化炭素濃度が上昇する可能性があります。
窓を開けることを、マフラー除雪やエンジン停止の代わりにしないことが大切です。
マフラーの出口だけ小さく掘る
排気口だけに小さな穴を開けても、周囲が雪で囲まれていれば排気ガスの逃げ場が十分に確保できない可能性があります。
マフラー周辺を広めに除雪し、排気ガスが車体の外へ抜ける空間を確保してください。
体調不良を眠気や疲労だと思い込む
雪道の長距離運転では疲労もたまりやすいため、一酸化炭素中毒の初期症状を単なる眠気や疲れだと思ってしまう可能性があります。
エンジンを使用している状況で頭痛やめまい、吐き気、強い眠気などの異変を感じた場合は、一酸化炭素中毒の可能性も考えて行動してください。
一酸化炭素中毒で注意したい症状
一酸化炭素中毒は初期段階では体調不良との区別がつきにくいことがあります。東京都の保健所などでも、濃度が高くなるにつれて頭痛、吐き気、めまいなどの症状が起こると注意喚起しています。
| 状態 | 現れる可能性がある症状 |
|---|---|
| 初期 | 頭痛、疲労感、だるさなど |
| 症状が進行 | 強い頭痛、めまい、吐き気、耳鳴りなど |
| 重症 | 意識障害、けいれん、昏睡など |
特に注意したいのは、一酸化炭素そのものをにおいで察知できないことです。排気ガス臭がしなくても安全とは限りません。
ガソリン車・ディーゼル車・EVでは注意点が違う
エンジンを搭載した車は排気ガスに注意する
ガソリン車やディーゼル車など、燃料を燃焼させるエンジンを使用する車では、マフラー周辺が雪でふさがれないよう注意する必要があります。
駐車時にマフラーが雪に埋まっていなくても、夜間に降雪が続けば状況は変わります。そのため、積雪中の車中泊では就寝前だけの確認では不十分です。
EVでも雪に埋まること自体への対策は必要
電気自動車(EV)は走行用エンジンの排気ガスによる同じタイプの一酸化炭素中毒リスクはありません。
ただし、大雪で車体が埋まればドアが開かなくなる、車をすぐ動かせなくなる、暖房使用によってバッテリー残量が減るなど別の問題があります。
JAFも、EVを含めて降雪地域ではこまめな除雪と、スコップや防寒用品などの備えが必要としています。
雪の車中泊へ行く前に確認したいチェックリスト
雪中でのトラブルは、現地で対処するより事前に避けることが重要です。出発前には次の項目を確認しておきましょう。
- 大雪や暴風雪の予報が出ていないか
- 冬用タイヤを装着しているか
- 必要に応じてタイヤチェーンを携行しているか
- スコップを積んでいるか
- 寝袋や毛布など十分な防寒用品があるか
- 燃料やバッテリー残量に余裕があるか
- 飲料水と非常食があるか
- スマートフォンを充電できるか
- 緊急時の連絡手段を確保しているか
国土交通省も、大雪が予想される場合には不要不急の外出を控えることや、やむを得ず車を運転する場合には冬用タイヤ、チェーン、スコップなどの冬用装備を準備するよう呼びかけています。
車中泊で雪とマフラーについてよくある質問
マフラーが少し雪に埋まっただけなら大丈夫ですか?
安全とは判断できません。排気口やその周囲に雪があると、排気ガスが正常に外へ逃げにくくなる可能性があります。
エンジンを使用する前に雪を取り除き、排気ガスの逃げ道を十分に確保してください。
窓を開けて寝れば一酸化炭素中毒を防げますか?
窓を開けるだけで防げるとは限りません。JAFのテストでも、マフラー周辺を除雪せず窓を約5cm開けた条件で一酸化炭素濃度が上昇しています。
降雪時はエンジン停止を基本とし、やむを得ず使用する場合はマフラー周辺の除雪を優先してください。
車中泊でエンジンを切ると寒すぎませんか?
厳冬期はエンジン停止後に車内温度が大きく低下する可能性があります。そのため冬用寝袋、毛布、防寒着、帽子、手袋などを準備し、エンジンに依存しない防寒対策を行うことが大切です。
何分おきにマフラーを確認すれば安全ですか?
「何分おきなら必ず安全」という基準はありません。雪の降り方や風、吹きだまりのでき方によって積雪速度が大きく変わるためです。
激しい降雪や吹雪では短時間で状況が変化するため、エンジンを使用し続けること自体を避け、安全な場所への避難や救助要請も検討してください。
立ち往生して車から出られない場合はどうすればいいですか?
北海道などの自治体は、大雪や吹きだまりで立ち往生した場合にはロードサービスなどへ救助を依頼し、近くに避難場所がない場合は消防の119番や警察の110番へ連絡するよう注意喚起しています。
車が雪に埋まったときはエンジンを切ることを基本とし、車外へ出ることが危険な天候では無理に外へ出ないことも重要です。
車中泊で雪によりマフラーが埋まる事故を防ぐために
雪の日の車中泊で最も覚えておきたいのは、マフラーが雪で埋まった状態でエンジンをかけ続けると、一酸化炭素中毒につながる危険があるということです。
降雪時は可能な限りエンジンを停止し、やむを得ず使用する場合はマフラー周辺を十分に除雪してください。窓を少し開けるだけでは安全対策として不十分な場合があります。
さらに、冬用寝袋や毛布、防寒着、スコップなどを準備し、エンジンを停止しても一定時間過ごせる状態を作っておくことが大切です。大雪や暴風雪が予想される場合は、そもそも車中泊や不要不急の移動を中止する判断も命を守る対策になります。

